垢離こり)” の例文
その事は言わぬけれど、明方の三時から、夜の白むまで垢離こり取って、願懸けすると頼んだら、姉さんは、喜んで、承知してくれました。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山清水の溜井たまりい垢離こりをとって、白い下着に、墨の法衣ころもをつけ、綽空は、叡福寺のくりやから紙燈芯かみとうしんを一つもらって、奥の御霊廟みたまやへ一人すすんで行った。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上流に温泉があって水色が赤いからだともいい、また湯殿山の登拝者が源流で垢離こりを取る為に垢川と称し、転じて赤川となったものともいわれている。
二、三の山名について (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
お産の前後に来て垢離こりを取り生れ子の安全をお祈りするところであった為に泉の名を子安の井といい、やはり弘法大師の加持水だという伝説をもっていました。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
と云うのは今では滝の水は、巨大な棒——樋なのであるが、それを伝って岩組の建物——すなわち華子の垢離こり部屋なのであるが、その中へ落ち込んでいるのであった。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
神様や仏様は人の苦しむのを見て悦びなさるはずはないが、人が物を頼むにも無理力むりぢからを入れて頼んだからってくものではない、お前も同じ人に生れていながら、この寒空さむぞら垢離こりなど取って
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
垢離こりを取るというのは妙な言葉で、どうしてこんな文字を書くのか、まだはっきりとしていないが、ともかくも以前は神を拝する人々が、いずれも全身に水を浴びてから
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
うるおいたる緑の黒髪はさっと乱れて、背と胸とに振分けたり。想うに、谷間を流るる一条ひとすじの小川は、此処に詣ずる行者輩の身をきよむる処なれば、婦人も彼処あすこにこそ垢離こりを取れりしならめ。
黒壁 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あるいは参詣の人たちが垢離こりを取った姿のままで、帰りにどやどやとその家に寄って行くこともある。こういう声を聴くと、たとえようもなく心丈夫こころじょうぶになり、また元気がつくものだそうである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
かは垢離こりれ。」
鑑定 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)