垂下ぶらさ)” の例文
手に大きな箱を垂下ぶらさげていた。盲目で竹の杖を突きながらとぼとぼと私の後方うしろについて来たが、途中から、私に手を引いてくれいといった。
黄色い晩 (新字新仮名) / 小川未明(著)
細い首に襟捲きを捲いて、角帯の下から重い金時計を垂下ぶらさげ、何事もなさそうな顔をして入って来た。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「おいおい。人の頭の上で泥下駄を垂下ぶらさげてる奴があるかい。あっちの壁ぎわがいてら。そら、駱駝らくだの背中みたいなあの向う、あそこへ行きねえ。」と険突けんつくを食わされた。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
たちまち進み来たれる紳士は帽を脱して、ボタンの二所れたる茶羅紗ちゃらしゃのチョッキに、水晶の小印こいん垂下ぶらさげたるニッケルめっきくさりけて、柱にもたれたる役員の前にかしらを下げぬ。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
父親はかばんに二本からげたかさを通して、それを垂下ぶらさげ、ぞろぞろ附いて来る子供を引っ張ってベンチのところへ連れて行くと、母親も泣き立てる背中の子をゆすり揺り襁褓しめしの入った包みを持って
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)