団々だんだん)” の例文
旧字:團々
兵庫の岸もすててはるかひがしの——義貞の位置からすれば——ずっと後方にあたる生田の川口の方へむかって団々だんだんと突進していた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
団々だんだんとして渦巻く煤烟ばいえんは、右舷うげんかすめて、おかかたなだれつつ、長く水面によこたわりて、遠く暮色ぼしょくまじわりつ。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
柳の影が、トロリと水にうつって、団々だんだんたる白い雲の往来ゆききを浮かべた川が、遠く野の末にかすんでいる。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
強いて附会こじつければ、癩者かたいの膝頭とでも言うべき体裁だが、銅の色してつらつらに光りかがやく団々だんだんたる肉塊の表に、筋と血の管のあやがほどよく寄集まり、眼鼻をそなえた人のつら宛然さながらに見せている。
玉取物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
空には、団々だんだんたる雲のたたずまいがあり、ここには、時雨堂の四方に、姿も息もひそめきって、時刻を待ちかまえる覆面の群れ。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
火の粉をもった黒けむりが団々だんだんと西から南から三十六峰の上をたえまなくかすめてゆく恐い夜空の下なのである。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ポツリ、ポツリ、大粒おおつぶの雨がこぼれてきた。空をあおげば団々だんだんのちぎれ雲が、南へ南へとおそろしいはやさで飛び、たちまち、灰色の湖水がピカリッ、ピカリッと走ってまわる稲妻いなずまのかげ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)