すだ)” の例文
が、其處そこに、また此處こゝに、遠近をちこちに、くさあれば、いしあれば、つゆすだむしに、いまかつ可厭いやな、とおもふはなかつたのである。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
虫が草間ですだいていた。そうして秋草が花咲いていた。草を分け露を散らし、光明優婆塞はひた走った。直江蔵人くらんどやかたのある鍵手ヶ原も走り過ぎた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
で、雲がかぶって、空気が湿しめった所為せいか、笛太鼓ふえたいこ囃子はやしの音が山一ツ越えた彼方かなたと思うあたりに、かえるすだくように、遠いが、手に取るばかり、しかも沈んでうつつの音楽のように聞えて来た。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)