さけ)” の例文
その声たとえば打ち殺さるる犬等の、ゆらめき漂う煙にも似し悲鳴のごとく、またたとえば直ちに腸を引きさかるる人間のさけぶに似たり。
道成寺(一幕劇) (新字新仮名) / 郡虎彦(著)
和尚さんはわけの解らないお経の言葉でもつて、悲しみさけんでゐる荒野の魂を、一心に鎮めてゐるやうに思はれた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
キチガイのようにれ狂い、さけぶアヤ子を、両腕にシッカリとかかえて、身体からだ中血だらけになって、やっとの思いで、小舎こやの処へ帰って来ました。
瓶詰地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その中に亀多く居るを見てこれを食いくそうとした爾時そのとき亀高声にさけんでわれらをただ食うとは卑劣じゃ、まず汝と競駈かけくらべして亀が劣ったら汝に食わりょうというと
ありがたいやら嬉しいやら、中席十日を限ってさらに御礼興行つかまつりますれば、銀座柳も蘇る今日、昔恋しい三遊柳、当時の繁昌さけばしめたまえと、新東京の四方様方に、伏してお願い申し上げます。
寄席行灯 (新字新仮名) / 正岡容(著)