啼泣ていきゅう)” の例文
しかしどんなに啼き騒いでも、私が居る限りは、古畑の家から誰も取りに出て来ないのだ。小鳥はむなしく啼泣ていきゅうしているのみである。
庭の眺め (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
先頃さきごろ祖母様を新築の一室にうつしまつらんとせしとき祖母様三日も四日も啼泣ていきゅうし給ひしなど御考被下くだされ候はば、小生がにわかに答ふること出来ざる所以ゆえんも御解得なされ候ならんと存候。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
予ヲテ外人ト啼泣ていきゅうシテマズ。留ルコト三日ニシテ乃チ発ス。八月登米県ニ赴任ス。一家東西相隔ツルコト二千余里。汝今茲こんじ庚午六月二十五日ヲ以テしょうス。ハ八月十四日ヲ以テ至ル。嗟乎ああ
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
中宮は堅い御決心を兄宮へお告げになって、叡山えいざん座主ざすをお招きになって、授戒のことを仰せられた。伯父おじ君にあたる横川よかわ僧都そうずが帳中に参っておぐしをお切りする時に人々の啼泣ていきゅうの声が宮をうずめた。
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)