哀愁かなしみ)” の例文
ベンヺ 馬鹿ばかな! そこがそれ、おさへられ、げんぜられるためしぢゃ。ぎゃく囘轉まはるとうたのがなほり、ぬるほど哀愁かなしみべつ哀愁かなしみがあるとわすれらるゝ。
日のくれぐれに、勝手口から井戸のそばに出て、平野をめぐる遠い山々のくらくなるのを眺めていると、身も引き入れられるような哀愁かなしみがそれとなく心をおそって来る。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
妻は此の哀愁かなしみをどうなとしてくれと云った様な、いっそ自暴やけ半分の乱調子で、いやいや、私は死なないわ、死なない、死なない、だって……だって一緒に逃げれば、死ななくても済むんですもの
陳情書 (新字新仮名) / 西尾正(著)
その夢の、哀愁かなしみの、いとほのにうれひく。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ただにたゆたふ眩暈くるめきの、恐怖おそれの、ほの哀愁かなしみ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
過ぎし日のあどけなかりし哀愁かなしみ
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)