クチ)” の例文
其について思ひ起すのは、友人永瀬七三郎君が、北河内サンクチ(野崎の近辺)に住んだ頃、こもろいと言ふ形容詞をよく耳にした。
方言 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
「デンデン ムシムシ」ト クチノ 中デ イヒナガラ、ニハヲ グルリト マハツテ キマシタ。
カタツムリノ ウタ (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
(ヒョロヒョロして、クチを突らして、カーキ色服に革の労働者帽をかぶった男)
ココニ二タビクチソソギ、 セナナル荷ヲバトトノヘヌ。
文語詩稿 一百篇 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
だから其すは極めて微量な敬意を示し、話しクチ柔軟ナドやかなことの為に遣つてゐるやうにさへ見えるが、而もすは丁寧法即対話敬語となりきつてゐる訣ではない。
「さうや さかいに」 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
むつかしくても、巫子のクチの場は、腕で行ける。黒格子を出て、其処に立つた与兵衛の姿を認める前の、為事のないほんの瞬間である。彼の始終憑んで来た芸、其によらぬ力が漲り出たのである。