口吟こうぎん)” の例文
同十九日——「天晴れ、風清く、露冷やかなり。満目黄葉の中緑樹をまじゆ。小鳥こずえてんず。一路人影なし。独り歩み黙思口吟こうぎんし、足にまかせて近郊をめぐる」
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
露営ろえいの塲所亦少しく平坦へいたんにして充分あしばして睡眠すいみんするを得、且つ水にちか炊煎かんせんに便なり、六回の露営ろえいじつに此夜を以て上乗ぜう/\となす、前水上村長大塚直吉君口吟こうぎんして曰く
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
わが発句の口吟こうぎん、もとより集にあむべき心とてもなかりしかば、書きもとどめず、年とともに大方おおかたは忘れはてしに、おりおり人のとい来りて、わがいなむをも聴かず、短冊色帋しきしなんどわるるものから
自選 荷風百句 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)