受容うけい)” の例文
後で考えれば不思議だったが、その時、袁傪は、この超自然の怪異を、実に素直に受容うけいれて、少しも怪もうとしなかった。
山月記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
へりくだる心、素直な心、受容うけいれる心、それはむしろ無学な者、貧しき者によけい恵まれている徳ではないでしょうか。
益子の絵土瓶 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
彼は彼女をかうした自由な自然の前へつれて来たことに、この上ない幸福を感じてゐるらしかつたが、彼女の頭脳あたまは其の感じを受容うけいれるには、余りに自分を失ひすぎてゐた。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
私はおまえのいうことを素直に受容うけいれる。だが、この言葉はまた、おまえ自身、かたくなな現実の壁に行きあたって、さまざまに苦しみ抜いた果ての体験から来る自戒じかいの言葉ではあるまいか。
巴里のむす子へ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
宇宙間に彷徨ほうこうしている超時間的、超空間的の無限の波動を、自由自在の敏感さで受容うけいれるところの……そうして受入れつつユラリユラリと桐の葉蔭で旋回しているところの……変幻極まりない鋭敏な
髪切虫 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
たまたま崖邸から女中が来て、苦情を申立てて行くと、その場はあやまって受容うけいれる様子を見せ、女中が帰ると親達は他所事よそごとのように、復一に小言はおろか復一の方を振り返っても見なかった。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それをいちいち受容うけいれていたのでは寺がたまりません。
鯉魚 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)