危巌きがん)” の例文
ようやく登り詰めて、余の双眼そうがんが今危巌きがんいただきに達したるとき、余はへびにらまれたひきのごとく、はたりと画筆えふでを取り落した。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
足裏を破りすねを傷つけ、危巌きがんを攀じ桟道さんどうを渡って、一月の後に彼はようやく目指す山顛さんてん辿たどりつく。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
この寺の建築は小き者なれど此処の地形は深山の中にありてあるいは千仞せんじん危巌きがん突兀とっこつとして奈落をみ九天を支ふるが如きもあり、あるいは絶壁、屏風びょうぶなす立ちつづきて一水潺々せんせんと流るる処もあり
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)