印可いんか)” の例文
と、みずから料紙に向って、墨付すみつきをしたためた。富山城をふくむ新川郡一郡を、この後も、成政の扶持料ふちりょうとして与えるという印可いんかだった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
禅宗において特に重んずる以心伝心あるいは正師の印可いんかというごとき主観的事実を哲学的に活かせたというべきであろう。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
名に負う鏡弓之進は、高遠たかとおの城主三万三千石内藤駿河守するがのかみの家老の一人、弓は雪河流せっかりゅう印可いんかであるが、小中黒こなかぐろの矢をガッチリとつがえキリキリキリと引き絞ったとたん
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
クララが十六歳の夏であった、フランシスが十二人の伴侶なかま羅馬ローマに行って、イノセント三世から、基督キリストを模範にして生活する事と、寺院で説教する事との印可いんかを受けて帰ったのは。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「おれは一刀流の印可いんかさえもらえばいいんだ。一日もはやく奥伝をもらって、一人前の武芸者として立ちたい」
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
最後に現われた三人の射手は、印可いんかを受けた高弟で、綿貫紋兵衛、馬谷庄二、そうして石渡三蔵であったが的も金的できわめて小さい。一人で五本の矢を飛ばすのであった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
職屋敷ではまず従来から乞食扱いにされていためしいの琵琶弾きを収容して、これに官の印可いんかと保護を与えた。また、すさんだ大道芸に平曲へいきょくのよさを習得させた。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうだ、印可いんかは確かであろうな」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
垂井たるいまで行けば、弦之丞にも会えるだろうし、国分寺の印可いんかをうけて、目的地への渡海もたやすくできるものと、互に励ましあってきただけに、二人は希望の目前を絶壁にふさがれて
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、慈円僧正が、身にひきうけてとまでいいきって、官へ印可いんかをとりにやったのは一朝の決断ではなかった。先刻からの座談のうちに、烱眼けいがん、はやくも、十八公麿の挙止きょしを見て
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「私は、十数年前、当山にいて仲間僧ちゅうげんそうを勤めていたことのある朱王房しゅおうぼうといっていた者です。もっとも只今では、聖護院の印可いんかをうけ、名も播磨房はりまぼう弁円とかえて、山伏となっておりますが」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
藩の上下に行われ、九州一円を風靡ふうびし、遠くは四国中国からも、風を慕って、城下に来て一年も二年も遊学し、彼の門に師礼をって印可いんかを得て帰国しようとする者がずいぶんと多かった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)