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仲間僧
二十年前に、
彼奴と会った時は、俺は叡山の
仲間僧だったし、
彼奴はすでに、
授戒登壇をゆるされた一院の
主だった。
耳打ちし合いながら、
朽葉色の
頭巾や黒衣の影が、もうそこに近く見えて来た——武蔵と
稚児僧と、その二人を迎えに行った
仲間僧のすがたとへ、じっと、視線をそろえた。
「私は、十数年前、当山にいて
仲間僧を勤めていたことのある
朱王房といっていた者です。もっとも只今では、聖護院の
印可をうけ、名も
播磨房弁円とかえて、山伏となっておりますが」