半纒ばんてん)” の例文
縞の着物に、雑賀屋のしるし半纒ばんてんを着た、六十近い白髪しらが老爺ろうやが腰をかがめて、料理の盆を持ってはいって来た。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
継ぎはぎだらけの尻切り半纒ばんてんにどんつく布子を重ね、古股引ももひきに草鞋ばきである。頬冠りをした上に穴のあいた萱笠という、まことにいぶせき恰好であった。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
七つのとしより實家じつかひんすくはれて、うまれしまゝなれば素跣足すはだししりきり半纒ばんてん田圃たんぼ辨當べんたうもちはこびなど、まつのひでを燈火ともしびにかへて草鞋わらんじうちながら馬士歌まごうたでもうたふべかりし
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あごをしゃくったが、その顎の長さ——この寒気に、尻ッ切れ半纒ばんてん一枚、二の腕から、胸から、太股一めん、青黒い渦のようなものが見えるのは、定めて雲竜の文身がまんでもしているらしく
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
平次の差出した提灯に照らされたのは、ねんねこ半纒ばんてんを着て耄碌頭巾まうろくづきんを冠り、淺黄の股引をはいた老人姿ですが、顏を見るとまだほんの三十前後。——毛蟲眉の顎の張つた少し憎體にくていな男です。
銭形平次捕物控:126 辻斬 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
しりきり半纒ばんてんに、草鞋わらじばきで、腰に木刀を差し、印のある提灯を持って、駕籠の先に立って駆けた。