十曲峠じっきょくとうげ)” の例文
東ざかいの桜沢から、西の十曲峠じっきょくとうげまで、木曾十一宿しゅくはこの街道に添うて、二十二里余にわたる長い谿谷けいこくの間に散在していた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
急ぎ足ですた/\/\/\と馬籠の宿を出外ではずれにかゝりますると、其処そこには八重やえに道が付いて居て、此方こっちけば十曲峠じっきょくとうげ……と見ると其処に葭簀張よしずばり掛茶屋かけぢゃやが有るから
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
二人ふたりずつの押し手にそのあとを押させ、美濃と信濃しなの国境くにざかいにあたる十曲峠じっきょくとうげの険しい坂道を引き上げて来たのでもわかる。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その間には落合おちあいの宿一つしかない。美濃よりするものは落合から十曲峠じっきょくとうげにかかって、あれから信濃しなの国境くにざかいに出られる。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
三か月ほど後に、中津川の香蔵が美濃を出発し、東京へとこころざして十曲峠じっきょくとうげを登って来たころは、旅するものの足が多く東へ東へと向かっていた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
旅の荷物は馬につけ、出入りの百姓兼吉に引かせ、新茶屋の村はずれから馬籠の地にも別れて、信濃しなの美濃みの国境くにざかいにあたる十曲峠じっきょくとうげの雪道を下って来た。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
よくあの重いものをかつぎ上げて、美濃境みのざかい十曲峠じっきょくとうげを越えることができたと、人々はその話で持ちきった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
落合おちあいの両宿から信濃境しなのざかい十曲峠じっきょくとうげにかかり、あれから木曾路にはいって、馬籠峠の上をも通り過ぎて行った。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
十曲峠じっきょくとうげの上にある新茶屋には出迎えのものが集まった。今度いよいよ京都本山の許しを得、僧智現ちげんの名も松雲しょううんと改めて、馬籠まごめ万福寺の跡を継ごうとする新住職がある。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
美濃路みのじよりする松雲の一行が中津川宗泉寺老和尚の付き添いで、国境くにざかい十曲峠じっきょくとうげを上って来た時
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しばらく彼はそこに足を休めていると、ちょうど国境の一里塚の方から馬籠まごめをさして十曲峠じっきょくとうげを上って来る中津川の香蔵にあった。香蔵は落合おちあい勝重かつしげをも連れてやって来た。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
上りは十曲峠じっきょくとうげ、下りは馬籠峠、大雨でも降れば道は河原のようになって、おまけに土は赤土と来ているから、嶮岨けんそな道筋での継立つぎたても人馬共に容易でないことを思い出した。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
十一月にはいって、美濃落合みのおちあい勝重かつしげふるい師匠を見舞うため西から十曲峠じっきょくとうげを登って来た。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)