勾践こうせん)” の例文
あとで勾践こうせんが魚をいてみると、なつかしや范蠡の筆である。主君よ、范蠡がおります、どんな辱に耐えても死に給うな、としてあった。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
成程なるほど、私が唾を吐くのは確かに空中の埃のせいではあったが、そういわれて見ると、また先程の「天勾践こうせんを空しゅうするなかれ」の恥ずかしさや、一人ぼっちのの悪さ
虎狩 (新字新仮名) / 中島敦(著)
越王勾践こうせん呉を破りて帰るではありません、デンマーク人は戦いに敗れて家に還ってきました。還りきたれば国は荒れ、財は尽き、見るものとして悲憤失望の種ならざるはなしでありました。
かの勾践こうせんひそみならふことにはならねど、朝夕これを眺めまして、私がこの玉を抜き去りたる、責めの軽からざることを思ひまして、良しやたきぎに伏し肝はめずとも、是非ともこの指環の為に働いて
こわれ指環 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
が、越王勾践こうせんは、会稽かいけいの一戦にやぶれて、呉王のとりこになり、呉城の土牢に入れられて、幾年かすぎていた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かくて越が積年の“会稽かいけいはじ”をすすぎえたのは、ひとえに勾践こうせんもとに、ただひとりの范蠡はんれいがあったによる——と、漢土の史書は日本にまで彼の名とその忠節とをつたえていた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)