剽盗ひょうとう)” の例文
旧字:剽盜
魑魅魍魎ちみもうりょう猛獣毒蛇、剽盗ひょうとうの巣食っている富士の裾野を、どうしてこんなちっぽけな子が、無事に旅して来られたのだろう?
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
まして敗軍の将士が他領を通過しようという時などは、恩もあだもある訳は無い無関係の将士に対して、民衆は剽盗ひょうとう的の行為に出ずることさえある。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
剽盗ひょうとうか、それとも追手か。考える暇もなく激しく闘わねばならなかった。諸公子も侍臣等も大方は討たれ、それでも公は唯独り草にいつつ逃れた。
盈虚 (新字新仮名) / 中島敦(著)
火旋風ひつむじと共に走り出して来たのを見ると、それは不死人が都から連れて来た手下の禿鷹はげたか蜘蛛太くもた、穴彦などという一連の出没自在な剽盗ひょうとう仲間であった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さらに、青い背縞せじまのあるジャッカルの新種を、まだ外国人のゆかぬ東北チベットの鎖境——剽盗ひょうとう Hsianchengシアンチェン 族がはびこる一帯から持ちかえったのも彼だ。
人外魔境:03 天母峰 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
京から大津へ出る美濃路の口にあたる栗田口や逢坂ごえには、兇悪無慙な剽盗ひょうとうがたむろしていて、昼でも一人旅はなりかねる時世だったが、泰文は蝦夷拵えぞごしら柄曲えまげの一尺ばかりの腰刀を差し
無月物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「あの妹のお袖は善人さ。女も美しい気立ても申分はないようだ。が、兄のことまではわかるものか。現にちょうどあの頃、狸穴まみあなの骨董屋の手代で、五十両剽盗ひょうとうに取られたという訴えが出ている」
第四十一回 剽盗ひょうとうの難(一)
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
彼の生死不明のうわさは彼の養っていた畜群が剽盗ひょうとうどものために一匹残らずさらわれてしまったことの訛伝かでんらしい。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
同じ家中にいた頃は、身分の相違で圧迫され、同じ剽盗ひょうとうになってからも、技倆うでの違いで威圧された、その鬱憤を晴らすのが、何んとも云えず楽しいらしい。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
南海に剽盗ひょうとうが蜂起し、騒乱の被害地は、伊予、讃岐、また瀬戸内の各地にわたり、朝議でも、捨ておきがたしとなって、伊予守紀淑人の訴文を容れ、官船十数隻に、兵を満載して
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
第四十二回 剽盗ひょうとうの難(二)
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
いったいどこへ行くのだろう? この時代の裾野と来ては、猛獣毒蛇魑魅魍魎ちみもうりょう剽盗ひょうとう殺人鬼の住家だのに。……どっちを見ても危険でありどこへ行っても安穏はない。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
北方の山地に住む三十人の剽盗ひょうとうの話や、森の夜の怪物の話や、草原の若い牡牛おうしの話などを。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)