前倒のめ)” の例文
と、一尺ほどまた力を入れて右へ引いた戸の隙間から、頭へ雪の花弁はなびらを被って、黒い影が前倒のめるように飛び込んで来た。
ダガ、もう薬が廻ってきたのであろうか、体には全然力がなく、不甲斐なくも、その儘床に前倒のめってしまったのだ。
魔像 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
だが、それと同時に、黒吉は、いきなり打ち前倒のめされたような、劇しい不快な気持を、感じた。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
源吉は、胃の中のものが、咽喉元のどもとにこみ上って、クラクラッと眩暈めまいを感ずると、周囲あたりが、急に黒いもやもやしたものにとざされ、後頭部に、いきなり、たた前倒のめされたような、激痛を受けた。
鉄路 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
あの貰った莨を一口吸った時から、心臓が咽喉につかえ、体は押潰されるようにテーブルの上に前倒のめって、四辺あたりは黝く霞み、例えようもない苦痛が、全身に激しいカッタルサを撒散まきちらながら駈廻った。
孤独 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
それは山鹿をかばう、というのではなく、むしろ何かの場合に、山鹿を打ち前倒のめす為のキャスチングボートとして、ここでむざむざしゃべってしまうことを惜しんだ気持が、無意識に働いたものらしかった。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
黒吉は、突然、打ち前倒のめされたような気がした。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)