刻足きざみあし)” の例文
高箒たかぼうきを片手にたすきがけで、刻足きざみあしに出て行逢ゆきあったのがその優しいおんなで、一寸ちょっと手拭を取って会釈しながら、軽くすり抜けてトントンと、堅い段を下りて行くのが、あわただしい中にも
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と見ると茶店の方から古びた茶の中折帽なかおれぼうをかぶって、れいくせ下顋したあごを少し突出し、れ手拭を入れた護謨ごむふくろをぶらげながら、例の足駄あしだでぽッくり/\刻足きざみあしに翁が歩いて来る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
次第に迫る呼吸いきをととのえ、一気に雌雄を決しようと、刻足きざみあしをしてジリジリと進んだ。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
タタと刻足きざみあし諸共もろとも今打下した刀をひらりと返すが早いか下から斬上げて肩口へ打込んだ。眼にも留らぬ早業である。川合甚左衛門、自慢の同田貫どうたぬきへ手をかけたが抜きも得ないでたおされてしまった。
鍵屋の辻 (新字新仮名) / 直木三十五(著)