初心しょしん)” の例文
しかしせっかくの切り出しようも泰然たる「はい」のために無駄死むだじにをしてしまった。初心しょしんなる文学士は二の句をつぐ元気も作略さりゃくもないのである。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かの“鑁阿寺ばんなじの置文”は、彼の初心しょしんを目ざめさせたものであったが、鎌倉在住このかたの頼朝崇拝は、いよいよその大望の抱卵ほうらんに、翼やらくちばしなどの
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
連れのひとりは此の時代の江戸の侍にありがちないきな男であった。相方あいかたの玉琴にも面白がられていた。外記は初めてこの里の土を踏んだ初心しょしんの男であった。
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かれは自分の初心しょしんなことを女に見破られまいとして、心にもない洒落しゃれを言ったり、こうしたところには通人だというふうを見せたりしたが、二階回しの中年の女には
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
有らゆる用を足す上に、宿題を手伝ったり、試験の山をかけたりしてくれる。要するに内弟子として申分ない。しかし何よりも大切だいじな芸の方は未だ初心しょしんだから、前途ぜんと茫漠ぼうばくとしている。
心のアンテナ (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
彼は中学生が女学生を恋するように、純粋に、初心しょしんに恋していた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
『どうか知らないが、いつまでも、初心うぶを忘れないで、いい習慣だろ。いい事なら、もちあった方がいいと思うな。世阿弥の言葉じゃないが、初心しょしん忘るべからずだ』
押入れ随筆 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれど一方ではどうしても上がられるような気がしない。初心しょしんなかれにはいくたび決心しても、いくたび自分の臆病なのをののしってみてもどうも思いきって上がられない。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
思うに画と云う事に初心しょしんな彼は当時絵画における写生の必要を不折ふせつなどから聞いて、それを一草一花の上にも実行しようとくわだてながら、彼が俳句の上ですでに悟入した同一方法を
子規の画 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は中学生が女学生を恋するように、純粋に、初心しょしんに恋していた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
と文子さんは全くの初心しょしんで皮切りだった。
髪の毛 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ここでは、初心しょしんに木剣を持たせなかった。上泉伊勢守の門で考案したというとうという物を使っている。かわのふくろに割竹をつつみこんだ物である。つばはない、革の棒だ。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
食うにもいろいろ流儀がありますがね。初心しょしんの者に限って、無暗むやみにツユを
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)