刀傷かたなきず)” の例文
間もなく顔に、恐ろしい刀傷かたなきずのある、スペイン人か日本人かわからぬような、外国の船員服をきた男が、骨董店へやってきたのだ。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
保名やすな家来けらいのこらずたれて、保名やすな体中からだじゅう刀傷かたなきず矢傷やきずった上に、大ぜいに手足てあしをつかまえられて、とりこにされてしまいました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そして、関屋孫兵衛は、某所で果し合いをした折の刀傷かたなきずを病んでおるので、頭巾のままおゆるしを願いたいとつけ足した。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
イワンは顔に刀傷かたなきずの痕のある、そして灰色の口髭と色別いろわけのつかないような顔色をした老人で、いつも玄関のテーブルに——そこには武器類がかかっている——に控えている。
云いながら、隣りの対局へ、横から顔をつき出したのは、横鬂よこびんに黒い刀傷かたなきずのある村安むらやすでんろうである。
魚紋 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぎょッとして立ちどまると、勘太は背なかの刀傷かたなきずに、冬の痛みを急に思い出した。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)