凶兆きょうちょう)” の例文
「こよいは星の光いとほがらかなのに、いま天文を仰ぎ見るに、太白星たいはくせいをつらぬいて、一道の妖霧ようむがかかっている。これ兵変のある凶兆きょうちょうである」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ついに三羽ともたおれて死んでしまうまで。わしはその時恐ろしくなって、これはきっと凶兆きょうちょうだからと言って彼をとめました。しかし彼はききいれなかった。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
よるになると間もなく、板倉佐渡守から急な使があって、早速来るようにと云う沙汰が、凶兆きょうちょうのように彼をおびやかしたからである。夜陰に及んで、突然召しを受ける。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
不思議な凶兆きょうちょうとも云うべきものが、或は廣介のこの不安の最大の原因ではなかったのでしょうか。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
これを、層雲そううんくずれの凶兆きょうちょうともうしまして、暦数れきすうの運命、ぜひないことだと、お師匠さまも吐息といきをおもらしなさいました
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わしは凶兆きょうちょうを感じる。わしの運命は、わしの星は凶だ。(地に倒れる)
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
もし誰か、燈火占とうかうらないをなすものがいて、この夜の灯に対していたら、すでに何かの凶兆きょうちょうが、夜霧のかさ丁子ちょうじの明暗にも、うらなわれていたかも知れない。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「待てまて、たずねることがあらば、なんでも答えるほどに、その層雲そううんくずれの凶兆きょうちょうふうじる秘法をおしえてくれ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ざんねんながら、富岳ふがくの一天に凶兆きょうちょうれきれき、もはや、死か離散かの、二よりないようにぞんぜられまする」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あたりのわるい堂上では、ややもすると、物のだとか、けがれだとか、やれ吉瑞きちずい凶兆きょうちょうのと、のべつ他愛たあいないおびえの中で暮しているが、おれたち、陽あたりのいい土壌の若者には
世の中がいよいよ乱れる凶兆きょうちょうだ。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)