凜乎りんこ)” の例文
面貌だけは凜乎りんこたるところがあったけれど、なんの知識もない、十八歳の少年なのである。私にとって、唯一無二の苦手であった。
救主メシヤとしての凜乎りんこたるイエス様の自覚は、弟子をはじめ周囲の人々の目にも映じました。しかし彼らはこれを表面的に、浅薄にしか解しなかった。
また、そういう凜乎りんこたる良人の男性らしさにもかれた。恐いような魅力に恍惚となっている自分にはっと気がついた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勝海舟彼を評して曰く、「天資温和、容貌整秀、以て親しむべく、その威望凜乎りんこ犯すべからず。度量遠大、執一の見なく、殆んど一世を籠罩ろうとうするの概あり」
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
そう云いながら立ちあがった真名女のすがたは、甲冑もよく似合って、ひじょうに凜乎りんことしたものだった、人々は歎賞のこえをあげながらひとしく平伏した。
日本婦道記:笄堀 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
袴野は凜乎りんことしてあの日の貝ノ馬介の、どこが何やら見境のない血だらけの顔面を眼にうかべた。
一時に沢山の毛を抜くから血が出るです。誠にむごたらしい有様が見えて居るけれども当人はかえって平気です。いな、そういう風にしていかにも勇気凜乎りんこたる有様を人に示すのであるという。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
主意は泰西たいせいの理学とシナの道徳と並び行なうべからざるの理を述ぶるにあり。文辞活動。比喩ひゆ艶絶。これを一読するに、温乎おんことして春風のごとく、これを再読するに、凜乎りんことして秋霜のごとし。
将来の日本:02 序 (新字新仮名) / 田口卯吉(著)
あのひとなどは、さすがに武術のたしなみがあったので、その文章にも凜乎りんこたる気韻きいんがありましたね。
花吹雪 (新字新仮名) / 太宰治(著)
厳然たる確信の声! 凜乎りんこたる気魄きはく! これこそ実にゲッセマネの祈りの結論であったのです。
袴野は勿論野伏にも合す顔がない、なんだか合す顔がないということが、合されない顔になると考えこむと、凜乎りんことして来た。しかし貝は両肩を羽掻責はがいぜめにして、かかった。
主意は泰西たいせいの理学とシナの道徳と並び行なうべからざるの理を述ぶるにあり。文辞活動。比喩ひゆ艶絶。これを一読するに、温乎おんことして春風のごとく、これを再読するに、凜乎りんことして秋霜のごとし。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
その凜乎りんこたる言葉の余韻がいつまでもペテロの耳底に残って、これを言われた時のイエス様の泰然たる信仰と浸み込むような愛の態度がまざまざと想い出されていたのでしょう。