凜々りゝ)” の例文
松雪院は、いつになく真顔になった夫の様子に、凜々りゝしい勇士の面目を認めたような気がして、思わずかたちを改めながら云った。
凜々りゝしくたいして如何にも立派なる武士さぶらひ出立いでたちたりしかば是はと驚きさう云事いふことなら是非に及ばずと云直いひなほし早々此家を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
御溝の那方あなたに長く曳ける我影におどろきて、傾く月を見返る男、眉太まゆふと鼻隆はなたかく、一見凜々りゝしき勇士の相貌、月に笑めるか、花にわらふか、あはれまぶたあたりに一掬の微笑を帶びぬ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
肥えた尻に短く切つた尾の凜々りゝしく垂れてゐる栗毛と鹿毛とを怖さうに遠くから取り圍んで、わい/\囃してゐる子供等の中には、大人もだいぶゐた、其の一群れの中から
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
風にもめげぬ凜々りゝしさよ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
額のつまった、眼元口元の凜々りゝしい顔に子供らしい怒りを含んで、つッと立った儘弟と私の方をきり/\けている。信一は一と縮みに縮み上って蒼くなるかと思いの外
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)