先口せんくち)” の例文
先口せんくちだから、もう少しこっちを贔屓ひいきにしたら好かろうと思うくらいであった。——これで見ると人間の虚栄心はどこまでも抜けないものだ。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「何れでもお好きなのを差上げますよ。一番の先口せんくちさんですから、択り取り見取りでございますわ」
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
彼女は先口せんくちの紳士を無視して、さも慣れ慣れしい口を利いた。そして、その紳士にあっさり詫言わびごとを残したまま、柾木に何かと話しかけながら、彼の車に乗ってしまったのである。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
もう現に先口せんくちのお客があって、寝物語の座敷が約束済とのことでがっかりいたしました
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
もしたとえ、そのむすめが、ほかのうち少女しょうじょにしても、父親ちちおやは、まえに一人形にんぎょうのことで、おばあさんとかおなじみだったから、おばあさんは、あなたが、先口せんくちだといって、人形にんぎょうりました。
お父さんの見た人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それを先口せんくちにして、それが済んでから、兄貴の方へ廻すとしようじゃねえか
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
二人に出し抜かれたのだから念が入っている。先口せんくちから考査されると、此方の番にならない中に何方どっちか及第してしまう。しかし然う右から左へはめまい。就職だって、溜めて置いて一遍に銓衡する。
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「何しろ先口せんくちですし、お家がレッキとしていますから……」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
先方むこう先口せんくちだからかい?」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)