兇状きょうじょう)” の例文
みぎ兇状きょうじょうの女スリ上方すじへ立廻りたる形跡これあり似より下手人げしゅにん召捕りのせつは人相書照合一応江戸南町奉行まで示達じたつあるべきもの。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男はし、肌も白し、虫も殺さぬ顔をしているから、人殺しの兇状きょうじょうこそなけれ、自来也じらいやの再来とまでいわれた人間だった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「えこうっ、とっつぁん、やに手間あ取らせるじゃあねえか。人殺し兇状きょうじょうは、人ごろし兇状はな。いいか、人殺し兇——」
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
あっしも兇状きょうじょう持ちだ、まともなことの云える人間じゃあねえが、おようさんのような人を、これ以上いためるなんてこたあできません、おねげえだ、旦那
ひとでなし (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
二人はにらいの状態となり、おたがいに持つ兇状きょうじょうは、二人を奇怪きわまる共軛関係きょうやくかんけいに結びつけてしまった。
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
旦那、兇状きょうじょう持ちが、身をかくすに一番よい所は病院ですよ。
按摩 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
天下の兇状きょうじょうもちが、こんなにおりであるいていても、見るやつはなし、追いかけて来る犬もない。女のあるく道だけに、関所を
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「人殺し兇状きょうじょうの疑いだ」と千之助は云った、「この半月ばかりのあいだに、料理茶屋で人殺しが二件あった」
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
あっしは正真正銘しょうしんしょうめいの大盗ッ、秦野屋九兵衛という兇状きょうじょう持ちには相違ございませんが、十七年の昔をさかのぼれば
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「でも兇状きょうじょうのかるいやつは、それを帳消しにするつもりで、仲間を裏切ることがあるものだからな」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浅草孔雀長屋あさくさくじゃくながやの女スリ見返りお綱、旧悪の兇状きょうじょうはのこらずお上のお調べずみとなって、人相書は上方へも廻ったぞ。わしは、召捕りのために向った江戸与力中西弥惣兵衛やそべえじゃ。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二世荻江露友おぎえろゆうといって、江戸唄の豊後節ぶんごぶしからわかれたこの流派では、名人だったが、安政の大地震で、くなるし、母もないし、男の兄弟は、やくざで、一人は兇状きょうじょうを食らって
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)