兄者人あにじゃひと)” の例文
「ですが、念のため申しまする。兄者人あにじゃひと、いかにお身内のみの館でも、公卿のご風貌とはすぐ分ります。大事ございませぬか」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「俺はもう心を決めているのだが、兄者人あにじゃひと右顧左眄うこさべん、家のことを思ったり、大逆になるのを恐れたりして……」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
明治四十三年二月三日、粕谷草堂の一家が午餐ごさんの卓について居ると、一通の電報が来た。おけいさんの兄者人あにじゃひとからである。眼を通した主人は思わずああと叫んだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
誰のおかげだ、これも兄者人あにじゃひとの御守護のせい何ぞ恩返しを、と神様あつかい、伏拝みましてね
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ちょっくらちょっとあるまいと、源三郎以上に剣腕うでの立つ人を立ちあいに……と、こっちが申し出たのに対して、望みどおりに、剣の上でも兄者人あにじゃひとたる柳生対馬守が、判定者!
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そもそも兄者人あにじゃひとは線がほそくて、神経質で、いわゆる剣人らしい線の太さがない。ほんとをいえば、武蔵などとも、試合をするというのが間違っている。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「またかかることは、拙者の口から申したくはないが、拙者が亡師の意にそむき弥生どのに嘆きをかけて今また鳥越の兄者人あにじゃひとを怒らせて、かような陋巷ろうこうに身をおとしおるのも……」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
もう、女と酒に身を持ちくずして、大望も遂げ損なえば、兄者人あにじゃひとや思う人にも、顔を合せられねえ地獄の人間だ、さ、離してくれ、後生だから離してくれ
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「イヤ兄者人あにじゃひと、そこをふかく訊かれると、なんともはや面目はございません。こうお顔向けもならなくなる」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ああ、兄者人あにじゃひともさぞ悶々としているだろうに、何とかこの吉報を、知らせる手だてはないものかなあ
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
桓武天皇からの血をはずかしめやがって、蝦夷の奴婢と、くわるなどとは、あきれた呆痴者うつけものだ。——死んだ、兄者人あにじゃひとにも、相すまぬ。家のため、貴様のため、都へ出て、勉強して来い。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、真人間の道をさがすべきだと性根を入れかえ、それには兄者人あにじゃひとへお詫びしてもらおうと、むかし仲のよかった塩冶殿の一族富士名ノ二郎義綱をたよって行き、しばらく身を寄せておりました
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うむ、たしかにたしかに将監の手蹟しゅせき。……が、これは兄者人あにじゃひとへの名宛てになっておる。新六、わしにいて来い。すぐ兄者人へお目にかけ、また、中尾山の御本陣へも急達して、およろこびの顔を
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄者人あにじゃひと——」と、兄の袂をとらえて言った。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「父よ! ……。兄者人あにじゃひとっ」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄者人あにじゃひとも、おひとつ」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄者人あにじゃひとっ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)