便たつき)” の例文
これに反して瑞仙の家には後妻こうさいがあり、又十四歳になる先妻のむすめ千代がゐて、当歳の祐二の世話をする便たつきがあつた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
あはれ、この少女のこころはつねに狭き胸の内に閉ぢられて、こと葉となりてあらはるる便たつきなければ、その繊々せんせんたる指頭ゆびさきよりほとばしり出づるにやあらむ。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
あわれ、この少女のこころはつねに狭き胸のうちに閉じられて、ことばとなりてあらわるる便たつきなければ、その繊々せんせんたる指さきよりほとばしり出ずるにやあらん。
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
國利民福をもとむる便たつきを知らむとならば、政治家として常識を説きても善かるべく、經濟家として常見を唱へても善かるべけれど、常識は基督キリストを生ぜず、常見は釋迦しやかを成さず
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
蘭軒がいかに此春を過したかを知る便たつきとなるものだからである。「従来風雨祟花時。梅塢桃村緑稍滋。纔是出遊両三度。今朝徒賦送春詩。」蘭軒は少くも両三度の出遊をすことを得たと見える。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)