他所行よそいき)” の例文
その日は朝のうちから、女中達はそわそわしてゐたが、めいめい他所行よそいきに着換へ、厚手に白粉を塗つて、三田を促してうちを出た。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
旦那だんな役所やくしよかよくつさきかゞやいてるけれども、細君さいくん他所行よそいき穿物はきものは、むさくるしいほど泥塗どろまみれであるが、おもふに玄關番げんくわんばん學僕がくぼくが、悲憤ひふん慷慨かうがいで、をんなあしにつけるものを打棄うつちやつてくのであらう。
山の手小景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「おマンじゃないか。今ごろ、他所行よそいき支度で、どげえしたとな?」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
真新らしい夏帽子も他所行よそいきらしく光っている。
鶴は病みき (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「硯や墨にザラ使いも他所行よそいきも無いよ」
町内の口ききの、肉屋と米屋と車宿くるまやどの親方と床屋が、他所行よそいきの羽織を引かけて、一軒一軒説いて廻った。
遺産 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
「あれがたつた一枚の他所行よそいきだつたが、むざんなめにあはされちやつた。なんとかなるものなら、なるやうにして呉れ給へ。近所に縫物をする人があるだらう。」
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)