他所事よそごと)” の例文
「おゆるしなく、参りました。けれど、何でこれが他所事よそごとに見ておられましょうか。どうぞ、吉水の御門前まで、お供の儀、おゆるしくださいませ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どうも方々やなをかけておくですからな。大佐も毎月養育料を取られてゐるうへに、時々大きく持込まれるらしいんで、他所事よそごとながら、お察ししますよ。
花が咲く (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
さあ、そんな他所事よそごとばかり言ってないでもうおっしゃいな。なぜ今年は巴里祭に残っているかって言うことを。あたしはどうもたゞの残り方じゃないとにらんでいるのよ。
巴里祭 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
大公儀の御沙汰に当藩が承服せぬとなったら、そこがそのまま大公儀の付け目じゃ。越前宰相殿、駿河大納言殿の先例も近いこと。千丈の堤もあり一穴いっけつから……他所事よそごとでは御座らぬわい。
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「我は人なり、人間の事とし聞けば、善きも悪しきも他所事よそごととは思われず、そぞろに我が心を躍らしむ。」とばかりに、人の心の奥底を、ただそれだけを相手に、鈍刀ながらも獅子奮迅ししふんじんした
八十八夜 (新字新仮名) / 太宰治(著)
東京で一般的放送が開始されて後も、しばらくの間は全く他所事よそごとのように何の興味も感じなかったので、自宅へ受信機を備えるどころか、他所のでちょっと聞いてみようという気も起らなかった。
ラジオ雑感 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
鉄馬はそんな事を言って他所事よそごとのようにニヤニヤするのでした。
金之助も他所事よそごととは取らない気色けしき
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たまたま崖邸から女中が来て、苦情を申立てて行くと、その場はあやまって受容うけいれる様子を見せ、女中が帰ると親達は他所事よそごとのように、復一に小言はおろか復一の方を振り返っても見なかった。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
鐵馬はそんな事を言つて他所事よそごとのやうにニヤニヤするのでした。
船長が他所事よそごとのようにネービー・カットの煙を吹いた。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)