仄青ほのあお)” の例文
その扉の上の明窓あかりまどから洩れ込んで来る、仄青ほのあおい光線をたよりに、両側に二つ並んでいる急な階段の向って左側を、ゴトンゴトンと登り詰めて右に折れると
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そのいちばん奥にだけ仄青ほのあおい燭の光が洩れている。光秀はそこにいた。近習きんじゅも小姓も見えない。ただ独り白絽しろろの小袖を着、太刀、脇息きょうそくを寄せて坐っていた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時に若林博士は、その仄青ほのあおひとみを少しばかり伏せて、今までよりも一層低い調子になった。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
おもやつれしている品のよい母の顔は、梨の花みたいに仄青ほのあおかった。長い石垣には、こけの花がポチポチ見え、土塀のうえのこずえ黄昏たそがれかけていて、邸のうちから燈火あかりがもれている。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
繻子しゅす天鵞絨びろうどか、暗夜やみよからす模様かと思われるほど真黒いスクリーンの左上の隅に、殆ど見えるか見えない位の仄青ほのあおい、蛍のような光りの群れが、不規則な環の形になって漂うているのが
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そう云った軍医大佐の片頬には、何かしら……冷笑らしいものが浮かんでいるように思ったが……しかしそれは極度に神経を緊張させていた私の錯覚か、又は仄青ほのあおい光線の工合ぐあいであったかも知れない。
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)