かう)” の例文
春夏のかうに阿部侯正精は病気届をしたかとおもはれる。次の年の蘭軒の詩引に、「客歳春夏之際、吾公嬰疾辞職」云云と云つてあるからである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
かうを彼と結ぶもの、当世の才人すくなからず。その中に一詩人あり。Charles Baudelaire と云ふ。マネが侯爵夫人の画像を得て、愛翫あいがんする事洪璧こうへきの如し。
阿部伊勢守正弘は三四月のかう病に罹り、五月以後には時々じゞ登城せぬ日があり、じゆん五月九日より竜口たつのくち用邸に引き籠り、六月十七日午下刻に瞑した。享年三十九歳である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
……自分の如きものにさへ、屡々しばしば手紙を寄せてかうを求めた婦人が十指に余る。だ御目にかかつた事はないが夢に見ましたと云ふのがある。御兄様おにいさまと呼ぶ事を御許し下さいませと云ふのがある。
変遷その他 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
次に此書中より見出されたのは、狩谷棭斎の養孫矩之が本所横川より上野広小路にうつつた時期である。わたくしはかみに此移居が明治五六年のかうであつたと云ふ一説を挙げた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)