交々こも/″\)” の例文
地主も、自作農も、——土地を持っている人間は、悲喜交々こも/″\だった。そいつを、高見の見物をしていられるのは、何にも持たない小作人だ。
浮動する地価 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
要するに、女の職分を毅然として守る一個の性格と信念とが、純粋に美化され、おのづから相手の男に、情熱と休息とを交々こも/″\与へればいいのである。
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
さうして其が乾くと、谷の澱みに持ちりて浸す。浸してはさらし、晒しては水に潰でた幾日の後、筵の上で槌の音高くこも/″\、交々こも/″\と叩き柔らげた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
外村惣衞とむらそうえと申しておちいさい時分からお附き申した御家来中田千股なかだちまた、老女の喜瀬川きせがわ、お小姓しげるなどが交々こも/″\お薬をあげる、なれどもどっとお悪いのではない、とこの上に坐っておいでゞ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
が、その大きく見開いた眼の中と云ひ、引き歪めた脣のあたりと云ひ、或は又絶えず引き攣つてゐる頬の肉の震へと云ひ、良秀の心に交々こも/″\往來する恐れと悲しみと驚きとは、歴々と顏に描かれました。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
お米とおつぎが交々こも/″\いふのにつゞいて、おりかの聲も聞えた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
が、その大きく見開いた眼の中と云ひ、引き歪めた唇のあたりと云ひ、或は又絶えず引きつてゐる頬の肉のふるへと云ひ、良秀の心に交々こも/″\往来する恐れと悲しみと驚きとは、歴々と顔に描かれました。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)