うしの)” の例文
ゴケは「後家」などという文字をはやくから書いて、次第に夫をうしのうた不幸な女のみに限るようになったが、奥羽は一般にその語の用法がはるかに広い。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
また動物のあるもの(例せば犬)は嗅覚甚だ精しく、人間も蛮族や不具で他の諸覚をうしのうた者が鼻で多く事を弁ずるから、鼻の鈍い者ほど上等民族だなどいう。
(この尼が、十七年前にうしのうた子の右馬助家盛うまのすけいえもりに、頼朝は瓜二つともいいたいほどよう似ておる。右馬助がもし生きてありなばと、そぞろ思い出されて、涙がこぼれてならなんだ)
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
無用の事をするからおれが飲むとて飲んでしまい、足を画き添えようとした者その酒をうしのうた。
うしのうて、玄徳はいま家庭的には孤独ですが、さりとて、妻とわかれてから、肉まだ冷やかというほどの月日も経っていないうちに、どうして後添えなど持つ気になれましょう。正直、まだ望んでもおりません
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
支那でも初至の天癸から紅鉛を製し、童男女の尿より秋石をり、また新産児の胞衣えなを混元毬など尊称して至宝となし、内寵多き輩高価に求め服して身命をうしのうた例、『五雑俎』等に多く見ゆ。
「ことに、母をうしのうてから、なおさらに……」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)