亡母はは)” の例文
茶碗の酒をいで、仏壇の亡母ははへ最期を告げている一学であった。それを覗くと、木村丈八も、はっと、平常ふだんの自分に帰った。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
亡母ははによく似ている年とったそこもとをよくいたわって進ぜたなら、草葉のかげで母もさぞかし喜ぶであろうとこう思うによって、これからはそこもとを実の母同様に扱うから、そちも
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
秋立つ日につくつくぼふしの鳴きつづく亡母ははのたまひし玩具おもちやかも知れぬ
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
亡母ははの事が思出された。東京にゐた頃が思出された。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
黄昏たそがれの頃、独りで、裏山の亡母ははの墓前へ行って、好きな横笛を吹いていたと思うと、その笛の音が途切れた頃、彼は、草の上に坐って、割腹かっぷくしていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きらはるるしうちを受けし夢なれどめづらしく亡母ははの夢をみたりき
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
武蔵は気がついて、こういう周囲の物の気配に、思いもしなかった亡母ははの夢を見たのであろうと思った。そして、懐かしいものと会ったように、その風車へ見入っていた。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生れ来しいのちいとしむ夜の更けを亡母ははに添ふごとうつぶせに眠る
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
亡母ははの次の人みたいに甘えて来た世間知らずが、はっと、悔いられるとともに、思わずいった。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(妻も、亡母ははも、おれを待ちわびているとみえる。見ておれ、清水一学の死出の働きを)
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
明日あしたはもうここを去るというので、三之助は、こんな茅屋あばらやでも、自分まで三代も住んだ小屋かとながめて、夜もすがら、祖父おじいの思い出や、祖母おばあ亡母ははのことなどを、武蔵へ話して聞かせた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)