すく)” の例文
ピアノの無い小学校が稀であると同時に、中流以上の家庭で蓄音機の無い処はすくない方であろう。レコードなんぞは縁日で売っている。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
これは至極い案であるから、人名が多いか、すくないか、精細に調べさせて見ようと相談はたちまち一決して早速人名録作成の人に補助することにして
江戸ッ子に親類がすくないということは彼等の人口が殖えぬということで、結局、彼等の子を産む数がすくないということになる。
それからすくなくて三四台、多くて七八台から十台位の、美事に飾り立てた二頭立の馬車が行くので、その中に崑崙を飲みに行く富豪だの貴人だのが
狂人は笑う (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そうしてどこかのメッセンジャー・ボーイでも来たのかな……と思いながら立ち止まって、その少年の姿に気を付けてみると、心の底ですくなからず驚いた。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
北の方から深川方面のは寧ろ貧民に近い方で、芝の金杉方面のは貧民ではないが、イナセな気分がすくない。
一方はサッサと引込まれるといったような御経験は、特におつとめのすくない、率直を重んぜられる吾が日本の御婦人方にとってお珍らしいであろうと考えられます。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
を喜ぶ真実味のすくない人間は、いつも魂が上付うわついているから充実した機能の満足を遂げ得ぬ、だから将来滅亡するようになると云ったが、少々乱暴な議論だけれども
とうとうこれに浮されて、一生しんみりした鼻の表現の価値を認めず人間らしいつき合いの味を知らずに、しかも得々として眼をつぶる者さえすくなくないのであります。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しかし心の中ではすくなからず躊躇ちゅうちょしていた。否、むしろ一種の馬鹿馬鹿しさをさえ感じていた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
且つ、その刺戟の対象たる母親千世子が、うしろ向きになりたる姿を見たるがために、すくなからず幻滅されて、平生の埋智に帰りて就寝したるものなる事もまた察するにかたからず。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そのかんに数分、甚だしきに到っては一二時間の睡眠を経過せる事を発見する例、すくなからず。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
もっともこの七八年というもの彼は、所帯を持ったり、子供は出来たりで、好きな数学の研究に没頭して、自分の魂を遊離させる機会がすくなかったせいかも知れなかったが……。
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
だから吾が妻ながら時折は薄気味の悪い事や、うるさい事もないではなかったが、しかし、そうした妻の頭の作用はたらきに就いて私が内心すくなからず鬼胎おそれいだいていた事は事実であった。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
かえって得るところがすくないのを怨んだという佳話が残っているそうであるが、その辺にも礼節格式を重んずる翁一流の謙虚な用意が窺われて云い知れぬ床しさがしのばれるようである。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
まさか……まさかと思っていたのが案外早く手がまわったので……同時にすくなからず腹も立った。どうしても一番手数のかかる、最後の手段をらなければならない事が予想されたので……。
冗談に殺す (新字新仮名) / 夢野久作(著)