二絃琴にげんきん)” の例文
その二絃琴にげんきんの御師匠さんの近所へは寄りついた事がない。今頃は御師匠さん自身が月桂寺さんから軽少な御回向ごえこうを受けているだろう。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けば/\しい金蒔絵きんまきえ衣桁いこうだの、虫食いの脇息きょうそくだの、これ等を部屋の常什物にして、大きなはい/\人形だの薬玉くすだまの飾りだの、二絃琴にげんきんだの
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
二絃琴にげんきんで語りものをうたう、旅の者ではあるが、暫く滞在しているし、客の評判もよいということであった。
その時分、好事家こうずかの間から、ようやく一般的に流行しかけて来た、東流あずまりゅう二絃琴にげんきんのお師匠さんだったからだ。
彼女は寺小屋風が多分にのこった小学校に学んだり、三味線、二絃琴にげんきんの師匠にも其処そこで就いた。
すると、向うの家の二階で、何だか楽器をき出した。はじめはマンドリンかと思ったが、中ごろから、赤木があれはことだと道破どうはした。僕は琴にしたくなかったから、いや二絃琴にげんきんだよとてた。
田端日記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
こう考えると急に三人の談話が面白くなくなったので、三毛子の様子でも見てようかと二絃琴にげんきんの御師匠さんの庭口へ廻る。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
だからおしょさんが、お嬢さんあいての月謝をすこしばかり集めて、二絃琴にげんきんなんぞ教えているということは、めんどくさかったろうと思う。慰さみ半分のひまを消すためだったかもしれない。
二絃琴にげんきんの御師匠さんのとこで聞いた評判を話したら、さぞおこるだろうが、知らぬが仏とやらで、うんうん云いながら神聖な詩人になりすましている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)