亀清かめせい)” の例文
旧字:龜清
百本くいかどで、駒止橋こまどめばしの前にあって、後には二洲楼にしゅうろうとよばれ、さびれてしまったが、その当時は格式も高く、柳橋の亀清かめせいよりきこえていたのだ。
両国の橋手前はしでまえで電車を下りて、左へ曲って、柳橋を渡って、高山先生の跡に附いて亀清かめせい這入はいった。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
時々は紫色むらさきいろ亀甲型きっこうがたを一面にった亀清かめせい団扇うちわなどが茶の間にほうされるようになった。それだけならまだ好いが、彼は長火鉢ながひばちの前へすわったまま、しきりに仮色こわいろつかい出した。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
亀清かめせいだの、柳光亭だの、深川亭だのに始終もう入浸りになっていたのである……
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
僕のまわりにいた客の中には亀清かめせいの桟敷が落ちたとか、中村楼の桟敷が落ちたとか、いろいろのうわさが伝わりだした。しかし事実は木橋もっきょうだった両国橋の欄干が折れ、大勢の人々の落ちた音だった。
追憶 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
天気はまだ少し蒸暑いが、余り強くない南風が吹いていて、しのぎ好かった。船宿は今は取り払われた河岸かしで、丁度亀清かめせい向側むこうがわになっていた。多分増田屋であったかと思う。
百物語 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
同郷人の懇親会があると云うので、久し振りに柳橋の亀清かめせいに往った。
余興 (新字新仮名) / 森鴎外(著)