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乘込
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のりこま
外し給ふとは
卑怯なりと手引袖引萬八樓の
棧橋より家根船に
乘込せしが折節
揚汐といひ南風なれば忽ち吾妻橋をも打越え
眞乳沈んで
梢乘込と
彼端唄に
謠れたる山谷堀より一同船を
歸さず是非お
附合なされよと無理に
引留まだ日も高ければ
夕刻迄には
寛々としても歸らるゝなり決して
御迷惑は掛ませぬと
厭がる千太郎の
手引袖引萬八の
棧橋に
繋合たる家根船へ
漸々にして
乘込せり是ぞ千太郎と久八が
大難の
基ゐとこそは成りにけれ