中佐ちゅうさ)” の例文
かれの眼には、もう荒田老あらたろうや平木中佐ちゅうさの顔がちらつき、二人と東京の異変とが無関係なものとは考えられなかったのである。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
元洋もまた杉田門から出た人で、後けんと称して、明治十八年二月十四日に中佐ちゅうさ相当陸軍一等軍医せいを以て広島に終った。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
兵隊へいたいさん。かまわないそうだよ。あれはきのこというものだって。なんでもないって。アルキル中佐ちゅうさはうんとわらったよ。それからぼくをほめたよ」
ありときのこ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
将軍に従った軍参謀の一人、——穂積ほづみ中佐ちゅうさくらの上に、春寒しゅんかん曠野こうやを眺めて行った。が、遠い枯木立かれこだちや、路ばたに倒れた石敢当せきかんとうも、中佐の眼には映らなかった。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかし、しゃがれた声の調子はあまりにもいきりたっていたし、それを今朝の式場での平木中佐ちゅうさの言葉と結びつけて考えないわけには行かなかった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
おい、大変たいへんだ。おい。おまえたちはこどもだけれども、こういうときには立派りっぱにみんなのおやくにたつだろうなあ。いいか。おまえはね、この森をはいって行ってアルキル中佐ちゅうさどのにお目にかかる。
ありときのこ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
陸軍用の車からは、中佐ちゅうさ肩章けんしょうをつけた、背の高い、やせ型の、青白い顔の将校が出て来たが、しばらく突っ立って、すこしそり身になりながら、玄関前の景色を一わたり見まわした。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)