世中よのなか)” の例文
いっその事僕の方へ預かって気長に世中よのなかの事を教えて自分の心から血族結婚の弊害を悟らせるようにした方がいいと思って
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
容貌おもて、醜しとあれば疎み遠ざかり、あざみ笑ひ、少しの手柄あれば俄かにいつくしみ、へつらひ寄る、人情紙の如き世中よのなかに何の忠義、何の孝行かある。今に見よ。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
世中よのなかそむかせたまふ御便宜おんたよりとして、いよ/\法海の深みへ渓河たにがはの浅きに騒ぐ御心を注がせたまひ、彼岸の遠きへ此の汀去りかぬる御迷を船出せさせ玉ひて
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
竜田たつただの唐錦からにしきだのと名を附けて、朝夕その頭数を勘定しているような世中よのなかになっては、もうカワセミも安閑あんかんとして、ヒイーなどとは啼いてはいられないのである。
今の世中よのなかは我が娘に料理の趣味を教える親よりも活花の趣味を教える方が多い。家政や育児の趣味を教えるよりも国文や歌の趣味を教える方が多い。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
世中よのなかが開けてからは、かりに著しくその場合が減じたにしても、物憑ものつ物狂ものぐるいがいつも引寄せられるように、山へ山へと入って行く暗示には、千年以前からの潜んだ威圧が
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
今の世中よのなかは紳士たるものがテクテク道を歩いていると外聞が悪いというように申しますがそれは社会が間違っているので、モー少し社会が進歩したら
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ホントに大原さんの力を以て我邦わがくにの家庭教育を改良したらさぞ世中よのなかが清くなって楽しい事でございましょう。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
世間の人は直段ねだんさえ高く出せば上等の品物が買えると思って更にその品質を検査しませんけれども徳義のない商人の跋扈ばっこする世中よのなかでは決してそう参りません。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
兄さん、今のお話を聞きますと世中よのなかに誠実な人は滅多めったにないようですがマサカあんなでもありますまいね。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
今の世中よのなかは汽車中の衛生法すら一向行届いておらんから一事一物危険の種とならざるはありません。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
いかにもそうだよ、書画や骨董こっとうの鑑定に長じて千年以前の物もたちどころに真偽を弁ずると威張いばる人が毎日上海玉子しゃんはいたまごの腐りかかったのを食べさせられても平気でいる世中よのなかだもの。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
私が常に今のような事を言出すとヤレ君の説は極端だとか世中よのなかは道理ばかりで行かんとかぐに反対する人が多うございますけれども私のから見ると世中の方がよほど極端なので
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)