不意撃ふいうち)” の例文
あるいは石段をくだるやいなむかえのものにようせられて、あまりの不意撃ふいうちに挨拶さえも忘れて誰彼の容赦なく握手の礼を施こしている。出征中に満洲で覚えたのであろう。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さすがの迷亭もこの不意撃ふいうちにはきもを抜かれたものと見えて、しばらくは呆然ぼうぜんとしておこりの落ちた病人のように坐っていたが、驚愕きょうがくたががゆるんでだんだん持前の本態に復すると共に
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
迅雷じんらいおおうにいとまあらず、女は突然として一太刀ひとたち浴びせかけた。余は全く不意撃ふいうちった。無論そんな事を聞く気はなし、女も、よもや、ここまでさらけ出そうとは考えていなかった。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ところがこの不意撃ふいうちに驚いて車をかわす暇もなくもろくも余の傍で転がり落ちた、後で聞けば、四ツ角を曲る時にはベルを鳴すか片手をあげるか一通りの挨拶あいさつをするのが礼だそうだが
自転車日記 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私はKが再び仕切しきりのふすまけて向うから突進してきてくれればいと思いました。私にいわせれば、先刻はまるで不意撃ふいうちに会ったも同じでした。私にはKに応ずる準備も何もなかったのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
聴衆はちょっと不意撃ふいうちを食った。こんな演説の始め方はない。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
不意撃ふいうちに応ずる事が出来れば不意撃ではない。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)