不性ぶしょう)” の例文
何しろそんな風で言葉をけることが不性ぶしょうになって居ったものですから、突っ立った切り大宮君を眺めて居りますと、大宮君もまた私の方をジーッと眺めて
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
入れしゆえにつりし蚊帳かやが油煙にてまっ黒になりしという故事に引きくらべて文盲儒者の不性ぶしょうに身持ちをして人に誇るものあり。いかに学問するとても顔や手を
人の言葉――自分の言葉 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
御存じの不性ぶしょうものだから、時々のたよりをするでもなし、先方も同然です。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ああ、かなしみつばさは己の体に触れたのに、己の不性ぶしょうなためにかなしみかわりに詰まらぬ不愉快が出来たのだ。(物に驚きたるように。)もう暗くなった。己はまた詰まらなくくよくよと物案じをし出したな。
うらない独楽から角力すもう独楽や不性ぶしょう独楽にいたるまで独楽の眷属けんぞくをかぞえ立てれば数とかぎりはございませんが、ここに当座の花形粂吉がつかいまする独楽といッぱ、東都名題の名人づくり金造きんぞう独楽
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
尋ねてくものがあるから、おかしいぜ、此奴こいつ贔屓ひいきの田之助に怪我でもあっちゃあならねえと、直ぐにあとをつけてくつもりだっけ、例の臆病おくびょうだから叶わねえ、不性ぶしょうをいうお前を、引張出ひっぱりだして
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どうもいつもの不性ぶしょうに似ず、働くことと言ってはない。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
踏切がこんもりと、草の中に乾いた川のように、こう高く土手をいた処で、その、不性ぶしょうたらしい斑が、急に背筋にうねを打って狂って飛上るんです。何だかくわえて、がりがり噛りながら狂うんですよ。
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
不性ぶしょうを極め込んでいる。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不性ぶしょうげにやっとこたえる。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)