不品行ふしだら)” の例文
と、ついぼやくやうにいふ事がある。自分の病気を不品行ふしだらせゐだとばかし思つてゐる患者は、それが羅馬字と関係があると聞いて、大抵は一寸吃驚びつくりする。
……うちの娘は元来勝気な娘で、東京へ行って独身で身を立てる、女権拡張に努力するという置手紙をして出て行った位で、そんな不品行ふしだらをするような女じゃない。
空を飛ぶパラソル (新字新仮名) / 夢野久作(著)
人を殺しても守りたいほど、そんなに名誉が大切なら、なぜ不品行ふしだらをなさるんです。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今なら女優をおもわしめるジャラクラした沼南夫人が長い留守中の孤独に堪えられなかったというは、さもありそうな気もするが、マサカに世間で評判するようなソンナ不品行ふしだらもあるまいと
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
見る目は人のとがにして、有るまじき事と思ひながらも、立ちし浮名の消ゆる時なくば、可惜あたら白玉のきずに成りて、其身一生の不幸のみか、あれ見よ伯母そだてにて投げやりなれば、薄井の娘が不品行ふしだら
雪の日 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おかげ様で一郎が元の潔白な身体からだになりますばかりでなく、妹にも久しく不品行ふしだらな事が御座いません事が、亡骸なきがらをお調べ下さいましてから、お判りになりましたとの事で
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)