下瞰みおろ)” の例文
御輿の近づいたことを、お仙がしらせに来た。女連おんなれんは門の外まで出た。そこから家々の屋根、町の中央を流れる木曾川が下瞰みおろされる。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ある日姫と我等とは、荒れたる神巫寺みこでらの傍に立ちて雲霧の如く漲り下る二條の大瀑たいばく下瞰みおろしたり。
岸本は自分の乗って来た二本煙筒えんとつの汽船が波止場近くに碇泊ていはくしているのをその高い位置から下瞰みおろして、実にはるばると旅して来たことを思った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私は、佐久、小県ちいさがたの高い傾斜から主に谷底の方に下瞰みおろした千曲川をのみ君に語っていた。今、私達が歩いて行く地勢は、それと趣を異にした河域だ。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
吾々は深い海を下瞰みおろして思はず互に顏を見合せた。其時急激な、不思議な戰慄みぶるひは私の身體を傳つた。私は長くそこに立つて居られないやうな氣がした。
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
石垣いしがきに近く、花園を歩むような楽しい小径こみちもあった。そこから谷底の町の一部を下瞰みおろすことが出来る。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
松林の間を通して、深い谷の一部も下瞰みおろされる。そこから、谷底を流れる千曲川ちくまがわも見える。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
何時の間にか丑松は千曲川ちくまがはほとりへ出て来た。そこは『しもの渡し』と言つて、水に添ふ一帯の河原を下瞰みおろすやうな位置にある。渡しとは言ひ乍ら、船橋で、下高井の地方へと交通するところ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)