三絃さみせん)” の例文
「ねえ、花世さん、路考ろこうの門弟の路之助ろのすけが、また新作のはやりうたを舞台でうたっているが、三絃さみせん妙手があるのか、いつみても妙だぜ」
顎十郎捕物帳:02 稲荷の使 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
椅子にかけての琴、三絃さみせんは、見るにあぶなく、弾きにくゝはあるまいかと思われた。三曲んで休憩きゅうけいになった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
二箇ふたりの賊は商量だんがふして、次の日、何れの里にてか、筑紫琴つくしごと三絃さみせんなんど盗み来つ、この両種ふたくさをお夏に授けて、ひかせもし、歌はせもして、時なく酒の相手とす。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
三絃さみせんの音につれて笑ひどよめく聲は水に臨める青樓より起るなど、如何いかにも樂しさうな花やかな有樣であつたことで、然し同時に此花やかな一幅の畫圖を包む處の
少年の悲哀 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
やがて附けてしまおうかと云って芸妓が三絃さみせんを執った時から、一層激しい笑い声が聞えた。
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
中学卒業の祝いの宴会にもやって来て、いい声で歌をうたったり、三絃さみせんをひいたりした。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
見る如く淨瑠璃じやうるり三絃さみせんの外は正敷事たゞしきことを一ツもをしへずことに女の爲べき裁縫たちぬひの道は少しもらず自然しぜんとうは/\しきことにのみ心をかたむけしこと淺猿あさましけれこゝに白子屋の商賣しやうばいかゝりてしやう三郎が名代を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)