一石いっせき)” の例文
暫くしてこの二人は、久しぶりで一石いっせき囲むことになって、おたがいに多忙の心を盤の上に忘れてしまいます。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一石いっせきを下すごとに、ポコリポコリと、間の抜けた音がするという代物しろもの、気のいい女房のお静も、小半日この音を聞かされて、縫物をしながら、すっかり気を腐らしております。
蟠「どうだ、阿部は下手の横好きで舎弟に七もく負けたが、どうだ阿部と一石いっせきやりなさい」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それは客と一石いっせきやった後の引続きとして、是非共ある問題を解決しなければ気がすまなかったからであるが、肝心かんじんのところで敬太郎がさも田舎者いなかものらしく玄関を騒がせるものだから
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
措置そちを考え、あれこれと、名人の指が盤上へ、一石いっせき一石と打ち下ろすように、自室から、命令を出してはいたが、独りでいるその居室は、それ以外には、何の気配もせきこえもしなかった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一木いちぼく何十両、一石いっせき数百両なぞという——無論いまより運搬費にかかりはしたであろうが贅沢ぜいたくを競った。その地面にこけをつけるには下町の焼土では、深山、または幽谷の風趣おもむきを求めることは出来ない。
「アーメン」と迷亭先生今度はまるで関係のない方面へぴしゃりと一石いっせきくだした。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
秀吉は、この一会見に、上杉家との提携ていけいを固め、北陸の将来に、うごかない基盤をすえた。いや、帰するところ、この一行動もまた、徳川牽制けんせいの“先手取せんてとり”の一石いっせきを打ったものといってよい。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうぞ、もう一石いっせき
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)