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ちゃんちゃんこ
櫛巻の髪に柔かな
艶を見せて、
背に、ごつ/\した
矢張り
鬱金の裏のついた、古い
胴服を着て、身に
染む
夜寒を
凌いで居たが、其の美人の身に
着いたれば
麓へ十四五
町隔つた、崖の上にある、古い、薄暗い
茶店に
憩つた時、裏に
鬱金木綿を着けた
縞の
胴服を、
肩衣のやうに着た、
白髪の
爺の、
霜げた耳に
輪数珠を掛けたのが
相良玄鶯院は、熊手を休めて腰をたたいた。ついでに
鼠甲斐絹の
袖無着の背を伸ばして、空を仰ぐ。
刷毛で引いたような
一抹の雲が、
南風を受けて、うごくともなく流れている。