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ちけむり
黒鹿毛の
蹄をあげて、
無二
無三にかけちらしながら、はやくも
鞍上の高きところより、右に左に、
戒刀をふるって
血煙をあげる。
血汐である、
血煙である。夕闇なのと、深い霧で、よくは分らないが、
温い血液のかたまりが、ぱッと、側の者へ
刎ねかかった。
アヽ
予は
華族の
家に
生れたが、
如何に
太平の
御代とは
申せども、手を
袖にして遊んで
居つては
済まぬ、え
我先祖は
千軍萬馬の
中を
往来いたし、
君の
御馬前にて
血烟を
揚げ