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そのたもと
猶其袂から
手巾を
取出して、声立てさせじと口に
喰ませた。
斯くして冬子は、
彼の
空屋まで
手取り
足取りに担ぎ去られたのであった。
がたりと
音して一ゆり
搖れヽば、するり
落かヽる
後ろざしの
金簪を、
令孃は
纎手に
受けとめ
給ふ
途端、
夕風さつと
其袂を
吹きあぐれば、
飜がへる八つ
口ひらひらと
洩れて
散る
物ありけり
わが名を呼ばれて、お葉はふらふらと
起った。お清は慌てて
其袂を
曳いた。